856彭靖惠 - Baroque
「彼女こそ……私のエリスなのだろうか……」/“只有她…才是我的Alice吧…”
04.Baroque
翻译:玖羽
主よ、私は人間(ひと)を殺めました。/主啊,我杀了人
私は、この手で大切な女性を殺めました。/是我,亲手杀死了那对我无比重要的女性
思えば私は、幼い時分より酷く臆病な性格でした。/回想起来,我从小就相当地胆怯。
他人というものが、私には何だかとても恐ろしく思えたのです。/所谓的“别人”,对我来说总是无比可怕的存在。
私が認識している世界と、他人が認識している世界。/我认知中的世界和、别人认知中的世界。
私が感じている感覚と、他人が感じている感覚。/我感受到的感觉和、别人感受到的感觉。
『違う』ということは、私にとって耐え難い恐怖でした。/对于这种“不同”,我感到难以忍受的恐怖。
それがいづれ『拒絶』に繋がるということを、無意識の内に知っていたからです。/而那就和“拒绝”联系到了一起,我在冥冥之中也能明白。
楽しそうな会話の輪にさえ、加わることは恐ろしく思えました。/即使是快乐的对话,我也害怕加入其中。
私には判らなかったのです、他人に合わせる為の笑い方が。/我完全不能理解,别人为了互相接近而露出的笑容。
いっそ空気になれたら素敵なのにと、いつも口を閉ざしていました。/干脆变成像空气那样就好了,我一直紧闭双唇
そんな私に初めて声を掛けてくれたのが、彼女だったのです。/而第一次与那样的我搭话的,就是她。
美しい少女(ひと)でした、優しい少女(ひと)でした。/美丽的少女(人),温柔的少女(人)。
月のように柔らかな微笑みが、印象的な少女でした。/有着如月儿般柔雅的微笑,令人印象深刻的少女。
最初こそ途惑いはしましたが、私はすぐに彼女が好きになりました。/在起初的迷惑之后,我很快就喜欢上了她。
私は彼女との長い交わりの中から、多くを学びました。/我在与她长久的交往之中,学到了许多东西。
『違う』ということは『個性』であり、『他人』という存在を『認める』ということ。/所谓的“不同”其实只是“个性”,是人借以“认同”所谓“别人”的东西。
大切なのは『同一であること』ではなく、お互いを『理解し合うこと』なのだと。/重要的并不是“相同的事物”,而是人与人之间的“互相理解”。
しかし、ある一点において、私と彼女は『違い過ぎて』いたのです。/不过,只有一点,我是和她“完全不同”的。
狂おしい愛欲の焔が、身を灼く苦しみを知りました。/疯狂的爱欲之火将我焚烧烤炙,痛苦万分。
もう自分ではどうする事も出来ない程、私は『彼女を愛してしまっていた』のです。/我完全无法自已,因为我“已经爱上了她”。
私は勇気を振り絞り、想いの全てを告白しました。/我鼓足全身勇气,把情感全部向她告白。
しかし、私の想いは彼女に『拒絶』されてしましました。/然而,我的感情却被她“拒绝”了。
その時の彼女の言葉は、とても哀しいものでした。/那时她说出的话语,是何等地悲哀。
その決定的な『違い』は、到底『解り合えない』と知りました。/我明白了,那决定性的“不同”,终究还是“无法理解”。
そこから先の記憶は、不思議と客観的なものでした。/到此为止的记忆,很不可思议地,都十分客观。
泣きながら逃げてゆく彼女を、私が追い駆けていました。/她哭着逃开,而我则追了过去。
縺れ合うように石畳を転がる、《性的倒錯性歪曲》(Baroque)の乙女達。/仿佛纠结缠绕一般从石阶上滚落,“性别倒错扭曲”(Baroque)的女郎们。
愛を呪いながら、石段を転がり落ちてゆきました……/一边诅咒着爱情,一边从石阶上滚落……
この歪な心は、この歪な貝殻は、/这扭曲的心灵,这扭曲的贝壳
私の紅い真珠は歪んでいるのでしょうか?/我的红色珍珠也已经扭曲了吗?
誰も赦しが欲しくて告白している訳ではないのです。/我的告解并不指望得到谁的宽赦
この罪こそが、私と彼女を繋ぐ絆なのですから。/这罪孽的缘由,就是我和她之间的羁绊相牵
この罪だけは、神にさえも赦させはしない……/这罪孽的深重,即使是神也无法宽赦吧……
「ならば私が赦そう…」/“那么,就让我来宽赦你吧……”
歪んだ真珠の乙女、歪なる日に死す……(Baroque Vierge, Baroque zi le fine……)/扭曲珍珠般的女郎,在扭曲之日逝去……
——激しい雷鳴 浮かび上がる人影/——巨响的雷鸣 浮现的人影
いつの間にか祭壇の奥には『仮面の男』が立っていた——/不知何时在祭坛之后站立着“假面的男人”——
~終わり~